弁護士の業務の一つとして、取引を行うための契約書の作成、あるいは、取引の相手方から提案された契約書のチェックなどの業務があります。

ではなぜ、契約書を作成するのでしょうか。契約書を作成するメリットはどのような点にあるのでしょうか。

また、どのような点に注意をして、契約書を作成、チェックすればいいのでしょうか。

(1)事例

契約書等の書面を作成しないと、どのような問題が生じるのでしょうか、まずは、いくつか具体例を挙げたいと思います。

なお、下記の具体例は、私の経験、判例等から作成していますが、特定を避けるため、修正しています。

事例1-建築工事(請負契約)の追加工事

ア 事例
建設会社Xは、個人Yより、Yの自宅の建設を請け負いました。しかし、請負契約書を作成せず、簡単な注文書等の作成のみで、建築の作業に入りました。Yからは、上記住宅の完成までの間、いくつかの追加工事が注文され、Xは、その追加工事を行いました。

工事完成後、Xは、もともとの建設工事の代金●●●●万円に追加工事の代金△△△万円を加えた××××万円をYに対し、請求しました。

しかし、Yは、追加工事は、そもそもの建築工事の内容に含まれたものであり、その金額は支払えないと主張したことから、XはYに対し、請負代金請求のための訴訟を提起しなくてはならなくなりました。

イ 解説
(ア) 契約書の必要性
法律により書面で契約しなければ効力が生じないと定められている保証契約(民法446条2項)などの特殊な例を除けば、契約は、書面がなくても、口頭(こうとう)、つまり、口で言うだけで、契約書がなくても成立します。

しかし、書面がなければ、双方の記憶だけに頼ることになります。しかし、人間は勘違いしたり、忘れたりします。さらには、わざと自分の有利なように主張する人もいます。

事例の事案の場合が、XYのどちらかが勘違いしているのか、あるいは双方勘違いしているのか、うそをついているのかは、結局、わかりません。

Xが訴訟を起こしても、簡単に決着がつくとは限りません。むしろ、多くの場合は、Yは争ってくるでしょう。

途中で和解の話がまとまらなければ、判決となりますが、契約書はないのですから、その他の客観的な証拠がなければ、判決は、双方の担当者等が尋問で述べたこと等を証拠として出されることになります。

しかし、その結論がX勝訴となるか、Y勝訴になるかはわかりません。また、それまでには、時間がかかりますし、手間もかかります。

(イ) 本事例の回答
この事例の場合も、最初の請負契約はある程度しっかりしたものを作成し、後の追加工事については、1枚程度の簡単なものであっても、書面を作成しておけば、このような紛争は避けられたと思います。

この種の書面には、「契約書」「覚書」「確認書」「仮契約書」等さまざまな名称が付けられますが、その名称により効果が変わることはありません。したがって、追加工事について、前記のような「確認書」「覚書」を作成しても、立派に代金を請求することができるのです。

このことは、代金を請求される側からも言えることであって、「覚書」「確認書」「仮契約書」という名称から、そこで記載されている内容を吟味しないで、署名・捺印をすることは、大変な不利益を生じさせることにもなりかねないのです。

弁護士は、紛争になった後、訴訟になった場合も活躍しますが、事前に、例えば、この建築会社に対しては、無理なくルーティーンとして、前記のような契約書を作成できるよう協力することができます。

また、相手方の注文者に対しては、相手方である建築会社の作成した契約書に注文者が不利になる記載がないかどうか等をチェックすることもできますし、このような建築を多数発注する会社であれば、その会社の社員に対し、どのような点をチェックしていけばいいか、そのチェック機構をその会社と一緒に作り上げていくこともできます。

(ウ) 契約書の作成が難しい場合
ただ、この事例のような建築工事の場合は契約書の作成自体は、むしろ、比較的容易です。

目にみえないような作業の内容等を契約の内容とする場合は、契約書の作成はより難しくなります。しかし、そういうときこそ、むしろ、契約書の、必要性も大きいものとなり、プロである弁護士の出番でもあります。

たとえば、コンサルティング契約や、コンピューターのソフトの制作を内容とする契約の場合、そもそも、その作業の内容が形として見えないため、紛争の可能性がより高まります。

私が扱った裁判でも、コンサルティング契約で、その対価が何千万円なのに、契約書がなく、私は、請求側でしたが、非常に、苦労したケースがあります。幸いにその案件は、従前の取引及びその支払いがあり、また、尋問等の結果がよかったため、相当の支払いを受けることができましたが、結局、地裁でいい判決をもらっても、相手方が控訴し、3年程度の時間と相当の手間(私のだけではなく、依頼者の手間も膨大なものでした)がかかりました。

また、コンピューターのソフトの制作を内容とする契約のケースも、そもそもどのような機能のソフトができれば、契約の内容を満たすことになるのか、また、どこまでが契約で定められた内容で、どこからがアフターケアなのかについて、契約書を作成すること自体が大変ですが、しかし、そのような契約書がない場合、トラブルが生じると、訴訟等で解決するか、泣き寝入りするしかないこともあります。

東京の企業法務・顧問弁護士をお探しの方へ

東京弁護士会所属の川合晋太郎法律事務所は、困難な案件を多数解決してきた実績のある法律事務所です。

「取引先と問題になってしまった」「トラブルになりそうだな」と思ったら、川合晋太郎法律事務所にご相談ください。

土日も対応いたします。まずはお気軽にご相談ください。

電話番号:03-3511-5801
電話番号:03-3511-5801